この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

養育費を払っている側の経済的な事情だけでなく、再婚などの事情によって、養育費が滞納される、または支払われなくなるというのは、トラブルの中でもよくあることです。

しかし、支払われる側である子ども本人にとって、これほど不利なことはありません。

では養育費が支払われなくなった時、強制執行をするにはどうすれば良いのでしょうか?

トラブルの中で多い「養育費の不払い」

弁護士さんに相談される「養育費トラブル」の中で多いのはやはり「養育費の不払い」についてだそうです。

これは子どもの教育に直接関わってくるお金であるので、支払われる側としては一刻も早く解決したトラブルといえます。

では、穏やかな話し合いだけではこのトラブルが解決しそうにもない場合、どのようにすれば強制執行が可能なのでしょうか。

こういう場合は強制執行が可能です!

離婚をする際に、自分たちの間の口約束や、自分たちで作成した離婚協議書があるという人も多いと思いますが、実はこの「口約束」や「自分たちで作成した離婚協議書」では養育費の強制執行をすることはできません。

強制執行が可能になるのは、次の場合。

  • 養育費の支払いに関して、裁判で勝訴しているとき
  • 養育費の支払いに関して調停が成立しているとき
  • 離婚協議書に養育費についてのことが記載されており、これがなおかつ公正証書であるとき
  • そしてさらにそこに「執行承諾文」が入っている時(執行承諾文とは、不払い時に強制執行しても良いと承諾しているということ)

つまり、離婚の際には上記のことについてしっかりとしていれば、万一不払いになっても強制執行が可能になるのです。

SPONSORED LINK

強制執行手続きってどうやるの?

よし!手元に証拠はあるから、強制執行だ!と思っても相手に財産がなかったり、お金として回収できそうなものに対して強制執行ができなければ、養育費は回収できません。
ですので、強制執行をする前には、必ず相手の財産調査をしましょう。

ちなみに強制執行で差し押さえできる財産というのは「不動産・動産・債権」の3つで、不動産は言わずもがな「土地・建物」を指し、動産は具体的には「時計・宝石」などの、売却で金銭になるものです。

質草みたいなものですね。

また債権は、具体的には「給料」や「預貯金」ですね。

強制執行する際には、これらの財産について、しっかり財産調査を行ったうえで差し押さえにかかる必要があるのです。

こうした財産調査をし終わったら、次は債務名義の送達申請をする必要があります。

この債務名義の送達申請の手続きは、判決書や公正証書で行う場合は、強制執行をしたい側が、執行官に対して、その謄本を強制執行前か、執行と同時に相手側に送達しなければならないということを、裁判所に申し立てます。

この申し立てを受けて、執行官は謄本を送達し、申立人は執行官から謄本を送達した照明をもらうことになります。

これが判決書や公正証書でなく、和解調書や調停調書の場合には、調停もしくは和解した裁判所の裁判所書記官が送達を行うことになります。

ちなみに、裁判所の和解調書や公正証書などによって強制執行をするには、ここに使用する債務名義の「正本」に「執行文」があることが必要不可欠です。

ここまで強制執行をする前段階までの手続きについて説明してきましたが、

次は具体的に何を差し押さえるのが得策についてです。

「何を強制執行するのが一番得策か」などについてご紹介します。

一番確実に養育費をとれるのは…!

これはやはりと言うべきことですが、養育費の強制執行で一番回収できる確率が高いのは「給料」もしくは「預貯金口座」の差し押さえですね。

しかしながら預貯金についてはほとんどないという人も多いので、ここは給与を差し押さえるのが1番です。

ただ、給料を差し押さえるというのは、相手がもらった給料を養育費として差し出させるのではなくて、給与を支払っている企業に対して「その給料はこちらに払ってください」と差し押さえることができるということです。

もし相手が預貯金をもっているなら、その預貯金がある金融機関に利息付で返金しなさい!と言えるので、相手がもっている口座を差し押さえられるのです。

ただし、養育費などでの給与差し押さえに関しては、給料からまず税金と、社会保険料と通勤手当を差し引いた金額の2分の1というのが差し押さえられる可能金額になります。

全額を差し押さえることはできませんので、そこは理解しておきましょう。

しかし、給与債権を差し押さえることができれば、毎月差し押さえをしなくても、給与に関しては翌月以降も差し押さえの効力が続くので、相手方がその企業で働く限り、差し押さえの効力は継続します。

つまり、給与口座を差し押さえられれば、こちら側の請求債権額を満たす時まで、毎月継続して養育費を回収できることになります。

ただ、給与を差し押さえるということは、養育費の不払いが生じていることを会社に知られることにもなりますので、強制執行前に、このまま支払いがなければ給料差し押さえしますよ、と通告すれば、観念して支払いに応じるようになる人も多くいます。

給与差し押さえに必要な書類って?

ここまでにご紹介してきたように、養育費の不払いへの強制執行で確実に「回収」ができそうなのは「給料の差し押さえ」なわけですが、給料を差し押さえるためには以下の書類が必要になります。

強制執行をする「権利」を証明する「公的」文書
例)裁判所による判決書・離婚調停や養育費請求調停にかかる調停調書・離婚協議書などを公正証書にしたもののいずれかです。

他にも、強制執行とは裁判所の許可を得て、裁判所の主導で行われるものであるのですが、裁判所はその強制執行相手がどこのだれで、相手がどんな財産をもっているかまでは調査してはくれません。

もちろんですが。

ですので、差し押さえを行いたいなら、給与を差し押さえる場合は勤務先の情報だとか、預貯金を差し押さえるなら「銀行名・支店名・口座番号」などを裁判所に知らせる必要があります。

そして、財産調査をしたうえで、債権差押命令申立書というものを記載し、給与を差し押さえるなら相手の会社の登記簿謄本や住民票が必要になるのです。

また、給与差し押さえがめでたく可能になったら、相手が勤める会社の給与担当者などと、あなた自身が話さなければならないことがあるのもお忘れなく。