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自閉症というのは、そもそも「この痛みがあるから○○という病気である!」と断定しづらい病気であり、また同じ自閉症患者でも、その「個性」との兼ね合いで、同じ程度の重さの自閉症でもかなりの違いが出てきます。

さらにそこに「自閉症」としての症状だけでなく、各種発達障碍の症状(LDや多動など)が加わったりすることもあります。

そしてこの発達障碍というものも自閉的障碍のなかにあるもとして考える事を「自閉症スぺクトラム」というのです。

もう少し例を交えてご紹介すれば、この自閉症スペクトラムは「虹のような」感じであるということができます。詳細は以下に記していきます。

「虹」のグラデーションとしての「自閉症スペクトラム」

虹というのは、日本では7色とされていて、赤・橙・黄色・緑・青・藍・紫があります。

しかし、この7色に境界線があるわけではありませんよね。それぞれがだんだんと「その色」になっていっています。

赤と橙の境界線なんて本当にわかるものではないと思います。自閉症スペクトラムとは、こうした虹のグラデーションの様子を踏まえて「自閉症とは境界線のつけがたい各種の症状や病によってできている」としているのですね。

ここからここまでが自閉症!この境界線から向こうはアスペルガー症候群!そしてその向こうが高機能自閉症!というものではあり得ないのです。

確かに、自閉症の中でも、IQの高い群にある人のことは、高機能自閉症と呼びはしますが、ある自閉症患者Aさんがアルファベットを使いこなせても、高機能自閉症の患者Bさんにはそのことは出来ないかもしれません。

かといって、これだけを取り上げてBさんは「高機能」自閉症ではなかった、とは言えませんし、逆にAさんを高機能自閉症だった、とも言えないのです。

そもそも、スペクトラムという単語が英語の「連続体」を意味する単語なのです。同じ青にも薄い青や濃い青があるように、同じ「自閉症」であったとしてもそこには症状の「重さ」の違いや個性による症状の発現の違いがあるのです。

ちなみに、英語での自閉症スぺクトラムは「Autistic Spectrum Disorder」と表し、略称で「ASD」と呼ばれています。

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自閉症スペクトラムの歴史

これまでにご紹介した「自閉症スペクトラム」の概念というのは、1990年代に、主として自閉症・アスペルガー症候群を研究する識者らによって提案された概念です。

自閉症や、その周辺症状、また自閉的傾向のある発達障碍など、具体的には高機能自閉症とアスペルガー症候群にどのような違いがあり、それぞれの知能指数の高低などをどのように捉えるべきかといった多くの課題を体系化し、均質化することを目指しまとめられた概念なのです。

つまり、初めは、まだしっかりとした柱の存在していなかった「自閉症関係の病気」について、臨床医学や医学統計をしっかりと使ってまとめていこうということだったのですね。

体系化しなければ、今後の研究にも治療にもばらつきがでてきてしまいますので。

というのも、実は自閉症がしっかりと世の中の「医学者」に認識をされたのは1943年なのですね。もっと古くから、きっとこの病気自体は存在していたはずですが、もしかしたら昔は「個性」や「変わった人」という見方しかされていなかったのかもしれません。

病気としてきちんと定義されたのは、先ほどもお伝えした1943年、アメリカの精神学者レオ・カナーによるものが初めてでした。

それから50年が経ち、自閉症はやっと「連続体」であると認識され、今そのことを根底において、患者がより生きやすくなるための治療や取り組みが考えられているのです。