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養育費に関するトラブルで多いのはやはり離婚後のどちらかの「再婚」によって、養育費がどうなるか、というものです。

今回は養育費を受け取る側の再婚によって生じたトラブルと、そうしたトラブルを未然に防ぐためにはどうしたら良いのかをみてみます。

トラブルはこうして始まった

Aさん元夫婦のトラブル…元夫 太郎さん(仮名)38歳 服飾ショップ正社員/ 元妻 花子さん(仮名)36歳 飲食店アルバイト /子 一郎くん(仮名) 2歳

上記に挙げたAさん夫婦は1年前に調停離婚をしました。

2人の間にいる一郎くんの親権は元妻がもち、養育も元妻がすることになりました。

離婚後1年は月1回の頻度で太郎さんは一郎くんと面会交流をしていました。

しかし、先日、元妻から「再婚する」と言う話が出たのです。

一郎くんは花子さんの新しい夫と養子縁組をするということになっているため、花子さんは太郎さんに「再婚相手を父親として育てたいから、申し訳ないけど面会を減らすか、希望としては面会はもうやめてほしい」と申し出ました。

太郎さんは面会がなくなるのは悲しくもありましたが、子どもが新しい父親と早く良好な関係を築くために…と了承しました。

そしてその際、毎月3万円支払っている養育費について、元妻に尋ねてみました。

すると花子さんからは「5月に籍を入れるので、養育費も5月まででいい」という返事が。

その後、徐々に面会を減らし、4月には全く会わなくなりました。

太郎さんについては、一郎くんが将来、本当の父親を知りたくなったら連絡を取る、ということで元夫婦の間で合意しました。

そして5月、太郎さんが「最後の養育費」と思っていたお金を振り込んで一か月後…裁判所から突然「支払勧告」の文書が届いたのです!

内容は離婚時に決めた養育費が支払われていないので支払うように、というものでした。

太郎さんには青天の霹靂。

これは一体どういうことなのでしょうか?

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支払の継続中止は2人で決めたはずでは…?

裁判所からの支払勧告書を受け取ってすぐ、太郎さんは花子さんに連絡をとりました。

「5月分まででいいと言っていた養育費の支払勧告が来たがどういうこと?」と花子さんに尋ねた太郎さん。

しかし花子さんからは意外な答えが。

それは「私は5月まででいいなんて言ってない」というもの。

ここで2人の間では「言った」「言わない」の水掛け論が始まりました。

ただ、花子さんが嘘を吐いているのは明らかなのですが…。

花子さんと話し合っても仕方がないと憤った太郎さんは、口約束とはいえ、お互いが了承したのだからと、履行勧告を無視しました。

しかし1か月後、次は裁判所から「履行命令」という文書が届いたのです。

そこには、このまま養育費を支払わない場合、10万円の過料が課されるとありました。

ここにきて太郎さんはあわてて弁護士に相談をしに行きました。

弁護士の答えとは?

ここまでの顛末を弁護士に相談した太郎さんでしたが、弁護士からは期待とは異なる答えが返ってきました。

「残念ながら、一度調停で決定したことを変更するには、離婚時と同様に調停を開いて変更するか、裁判に訴えるのが一番の正攻法で、太郎さんのような口約束はリスクが大きすぎるんです。」というもの。

さらにこの事例のように、相手が非協力的な場合は口約束は守られない事の方が大きいということでした。

本当に養育費を減額もしくは停止することをお互いの間で決めておくには、養育費免除の話が出た時に、調停を起こしておくべきだったというのです。

調停は弁護士に相談したこの時点から起こすことは可能でしたが、5月以降の未払い分となっている6月・7月分についての請求はストップできないということでした。

太郎さんのその後

弁護士のアドバイスをもとに、太郎さんは急いで家庭裁判所に「養育費請求調停」を申し立てました。

そして弁護士と相談しながら「子どもは花子さんの再婚相手とすでに養子縁組を結んでいること」「現在面会交流もないのに、金銭要求だけをするのは金利に対する責務が過大である」などということを主張し、どうにか養育費免除を認めてもらいました。

しかしやはり、口約束の部分は認められず、未払い分になっていた6月・7月分の6万円は支払うことになったのでした。

養育費は子どものための金銭であり、養育費を受けるのは子どもの当然の権利なので、相当の理由がない限りは打ち切るものではないものでしょうが、お互いの合意のもと養育費の免除を決定する際には、きちんと公的な証拠を残すのが大切です。