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養育費を巡るトラブルでは、「再婚」をキーワードにしたトラブルというものがそのほとんどを占めます。

それは養育費を払っている側・支払われている側に関わらず、とにかくどちらかの親が「再婚」をすることにあたり、離婚時に決めていた双方間の「養育費」に関する内容を変更しようとするために、トラブルになることが多いのです。

今回は、その再婚と養育費について、8つのケースをご紹介します。

CASE1:養育費が減額することの多い「子を養育する元妻」の再婚

離婚時に決めた養育費の額が減額することが1番多いケースは、何と言っても「子を実際に養育する元妻」が再婚した場合です。

ただ、CASE1では、妻の子と妻の新しいパートナーの間には養子縁組はしないというケースとしています。

この場合、新しいパートナーは、妻の連れ子に対しての扶養義務は負いません。

しかしながら、元妻が再婚した相手の収入が大きい場合、そこまで多くはなくても、元夫よりは収入が多い場合は、元妻の経済的余裕が増えるという見方をされるので、実父・実母を比較すると、実質的に実母の方が子への負担割合が多くなるのです。

つまり、結果的に実父の負担である養育費が減額される傾向が多くなるのです。

これは民法880条に由来するところでもあります。

CASE2:「子を養育する元妻」の再婚で、子が新しい父と養子縁組をした

このケースは、CASE1の条件に「子と新しい父との養子縁組関係」が成立している場合になります。

子を養育する元妻が再婚するケースでは、元妻は新しいパートナーと自分の子どもとの間に「養子縁組」を結ぶことが多いので、子ども1人に対して「養育者」が3人となることから、養育費の減額調停を元夫が開いた場合、減額されるケースが多いと言えます。

というのも、離婚時に決められた養育費の算定というのは、子に対する養育者が「2人」ということを想定して算出されているからです。

ですので、このようなケースになった場合は、扶養者が子に対してどのような負担をするかと言う「分担」を協議します。

もし協議がまとまらなければ、家庭裁判所において、養育費変更の申立をし、ここでの協議でも話がまとまらなければ、裁判所が金額を決定することになります。

ちなみに、扶養義務は養親の方が優先となるので、CASE2でも、養育費は減額される傾向は多いです。

ただ、養親の経済力が小さい場合には、実父の負担が多くなる時もあります。

CASE3:養育費が増額する場合が多い「子を養育する元妻の再婚と出産」

これも、民法の由来としては880条です。

ケースとしてどういうことかと言うと…。

子を養育する元妻が、再婚をします。

そしてその再婚相手との間に新たに子が生まれます。

そうすると、元妻は子ども2人の養育義務が発生したことになります。

ということは、元妻には2人分の養育に対する経済的負担が生じたことになります。

養育費と言うのは、前提として「子の養育費用は父と母のそれぞれの経済状況に応じて分配を決める」ということになっています。

ですので、例えば元妻に子を養育する力が20あったとして、これが子が1人であれば、1人に20すべてを使えますが、子が2人では、1人に10ずつしか分配できないことになります。

つまり、元夫の子に対する分配は、当初より10減ることになりますよね。

こうしたことから、元夫は、自分の子どもに対して、減った分の10を追加で請求されるかもしれないのです。

ここからが、CASE3の冒頭でお伝えした民法880条に関係するのですが、この条項を由来に、元妻は元夫に対して、養育費増額請求が可能になるというわけです。

CASE4:養育費を支払っている元夫が再婚した場合、養育費は減額されることが多い

これは養育費を支払っている側の元夫が再婚したケースです。

これも、再婚により元夫の扶養負担が大きくなることで、養育費は減額される傾向が多いのですが、この場合は一概に「再婚したから養育費が減額できる」というものではありません。

というのも、養育費を支払う側は、離婚時の協議で、養育費を支払っていく条件に「再婚をしても支払い義務はなくならない」ということを織り込んでいる場合も少なくないからです。

もちろん、民法880条で、養育費を支払う側の事情の変更によって、養育費の減額は認められます。

ただ、元夫の再婚で、元夫の新しい家族への負担が増える事が、離婚時にすでに想定される範囲のことであれば、元夫が再婚したということだけでは、養育費の減額は認められるのが難しいといえます。

ここまで、養育費が増額・減額される場合のケース4つをご紹介しました。
続いて、同じく養育費が減額もしくは増額する場合の残り4つをご紹介します。

CASE5:養育費を支払っている元夫の再婚と、再婚相手の出産があった場合

これは、前編でご紹介した「子を養育する元妻の再婚と出産」の逆バージョンと言えます。

先の元妻の再婚・出産のケースでは、出産で元妻の養育義務と負担が増えたことにより、元夫は実子に対して養育費を増額されることが多いということをご紹介しました。

今回は養育費を支払っている側の元夫が再婚し、再婚相手との間に新たに子をもうけた場合になります。

この場合は、元夫は養育義務が元妻との間の子と、新しい妻との間の子ということで増えたことになるので、元妻との間の子に対しては養育費を減額することが可能になるケースが多くあります。

具体的には、元夫が主妻へ養育費減額請求ができる状況と言うことになります。

これも民法880条によっています。

CASE6:離婚した元妻・元夫のそれぞれが再婚をした場合

このケースでは、お互いの経済状況がそれぞれ変わってきますので、養育費の支払は増額するケースもありますし、減額するケースもあります。

この場合では、本当に色々なケースがあるので、一概にコレ!と結論を出すことは難しいのですが、お互いの再婚による諸処の事情で、お互いの扶養義務の増減や経済状況が変わることになるので、家庭裁判所などの判断で養育費の変更が認められることが多くなってきます。

CASE7:支払われた養育費は「トータル」で考えられることがある

このケースがどういうことかというと、まず離婚時に夫婦間で決めた養育費を、元夫が支払い続けていたとします(子を養育しているのは元妻)。

養育費を支払い続ける中で、元夫は経済的に困窮した時期があり、本来ならここで養育費は減額されるべきだったとします。

しかし、元夫は当初の金額を、元妻と決めた「子が18歳になるまで」に従い支払い続けました。

そうして年月を経て、離婚時には想定していなかった事情が子どもに生じました。

例えば私立の大学に進学するために1人暮らしを始めるなどです。

ここで、元妻は元夫に対して養育費の増額を求めました。

しかし裁判所としては、本来なら減額して然るべき時に、元夫が支払い続けていた養育費の額を「過剰な養育費」として、トータルの養育費としては現在の不足分を補っていると判断し、増額の請求を認めませんでした。

もともとこの元夫婦は、離婚時に養育費の支払い終期を18歳としていたので、それも養育費を継続したり、増額することへのハードルになったと言えます。

CASE8:CASE7の発展編

CASE7は、元夫に経済的困窮状態があった場合でしたが、今回はそれとは少し異なり元妻が元夫に「再婚を隠していた」場合です。

離婚時に「再婚の通知」をお互い決めていなければ、特にお互いへの通知義務はありません。

これによることと、再婚を元夫に知らせると「養育費の減額を請求されるのでは」という不安から元夫に再婚を通知しない元妻は多くいます。

ただ、元妻が再婚し、元妻の経済状況に余裕ができたり、子と養父が養子縁組をした場合で、経済的に余裕が出た場合には、元夫には「養育費の減額請求」ができる状態にはなります。

ですので、この場合に、元妻が元夫に再婚や経済的余裕を通知しないことで、CASE7のように本当に養育費を増額したい事情が出来た場合、トータルで考慮されて養育費が増額できない場合もでてきます。

養育費の増減について8つのケースをみてきましたが、養育費はあくまで「子どもの権利」ということを念頭に、元夫・元妻・そして子どものそれぞれがより幸せに日々を過ごせる方法を模索してください。