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アトピーと言う言葉に「アトピー性皮膚炎」が加わるようになって80年あまりが過ぎました。

しかし、アトピー性皮膚炎が私たち「人間」を悩ませるようになったのは、もっとずっと以前からです。

ただ、現在でも「これを飲めば誰でも治る!」とか「この運動をすれば誰でも劇的に改善する!」という万人に対する特効的な「何か」は発見されていません。

今でも医療関係者によって、鋭意研究中の分野である「アトピー性皮膚炎」、その原因として、現在はどんなことがわかっているのでしょうか?

アトピー性皮膚炎の発症には複数の要因が絡んでいる

アトピー性皮膚炎は、例えば「Aという食べ物を食べたから発症した」とか「Bという場所にいたから発症した」というような単純な原因のみで発症しているわけではありません。

アトピー性皮膚炎も、アレルギーの一種ではあるのですが、だからと言って、特定の食物を食べたからとか特定の動物を触ったから、ということのみが原因となるわけではないのです。

現在、一般的に言われているアトピー性皮膚炎の原因・要因としては主に4つのものがあり、その他にもいくつかの原因・要因が挙げられています。

そして、それらの要因が少しずつ絡み合ってアトピー性皮膚炎を発症させることになっている場合がほとんどです。

要因1:腸・表皮・肺、そして口腔内などに存在する細菌叢(さいきんそう)

人間の体内や、表皮には無数に細菌叢が常在しているのですが、この細菌叢がアトピーと何らかの関連があることが現在解明されつつある事柄です。

ただ、この研究はまだはっきりとした結論が出されていないため、どんな細菌叢がアトピーと関連しているのかは未だ明確にはなっていません。

要因2:遺伝的要因

遺伝的要因については、アトピー性皮膚炎だけでなく、そもそも「アトピー」というアレルギー体質者について研究がなされていた90年ほど昔の頃より、注目をされてきた要因です。

現在では、遺伝子の解明によって、マスト細胞や好酸球にIgE抗体というアレルギー発症にかかわる抗体を結合させてしまうレセプターがあること、他にサイトカインのうち、アレルギーの炎症に関わる遺伝子が集中している遺伝子座というものが、アトピー性皮膚炎を始めとするアレルギー一般と関連していることが明らかになっています。

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要因3:栄養(食事)要因

食用油として使用される油脂の必須脂肪酸がアトピー性皮膚炎には深く関わっていることが最近では知られるようになってきています。

必須脂肪酸であるω-6脂肪酸(リノール酸)は、体内に入るとアラキドン酸という物質を生成します。

そしてこのアラキドン酸は、炎症やアレルギー反応に大変かかわりの深い生理活性物質のω-6プロスタグランジン、n-6ロイコトリエン等のオータコイド類が生成することになるのです。

これらの物質が体内で大量に生成されることで、アレルギー反応が強まり、アトピー性皮膚炎を発症させる要因となるわけです。

要因4:環境要因

アトピー性皮膚炎になりやすい素因を持つ人は、環境が「皮膚炎を発症させやすい」環境になることで、通常の人よりも早く、皮膚の状態を悪化させてしまいます。

アトピー性皮膚炎をは発症させたり、深刻な状態にさせてしまうものには次のような環境要因があります。

  • 皮膚の清潔を保てない環境(入浴や清拭がしにくい環境)
  • 皮膚に刺激を加えやすい環境(ナイロンタオルで身体を洗っているなど)
  • 適温・適湿で過ごせない環境(過度の乾燥はアトピー性皮膚炎を悪化させます)
  • 不規則な生活(新陳代謝の乱れはアトピーを悪化させます)
  • 油分や添加物の多い食事(油分・化学添加物・過度の糖分はアトピーを悪化させやすいと言われています)

その他)アトピー性皮膚炎では、皮膚の保湿が充分でないと、すぐに皮膚が炎症を起こしてしまう人が多くいます。

アトピー性皮膚炎の人は、肌の保湿成分であるセラミドの減少が要因の一つとも言われているので、保湿は重点的に行うことが大切です。