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自閉症や、自閉症スペクトラムと言った病・症状について、以前よりも耳にする機会が増えたと思う人は多いのではないでしょうか。

実際に自閉症や、自閉症にまつわるとみられる(自閉症周辺の症状を自閉症スペクトラムというのですが)症状をもつ人の割合は、ここ十数年で増えてきているのが事実です。

これは、この自閉症という病について、世間の理解が以前より広まったりしたことで、自閉症(軽度・重度の関わらず)と診断される人が増えたということにもよります。

しかし、どんなに自閉症の人の割合が増えたとしても、やはり人間は自分の周囲にそうした病の人がいるとか、自分自身が自閉症なのでは?と思うことがなければ、なかなか自閉症という病気について理解するきっかけは少ないといえます。

ただ、現在、自閉症の研究が盛んなアメリカにおいては、1部の研究で44人に1人が、何らかの自閉的傾向があるという結果も出ています。これほどまでに身近な病である自閉症について、もう誰も、他人事とは言えない時代になっています。

自閉症とは?症状にはどんな特徴があるの?

「自閉症」という単語だけからこの病気を読み取ろうとすると、多くの人は勘違いをしてしまいます。この漢字だけの情報では、自閉症はあたかも「何かのきっかけで、自分の殻に閉じ籠ってしまう」病気に思えるからです。

しかし、実際の自閉症は、そのように後天的な出来事をきっかけとして発症する病ではありません。飽くまで、先天的な脳(中枢神経系)の機能障碍が原因で起こる病気なのです。

ゆえに、自閉症にはしかるべき治療や、改善に向けての取り組み(療育)が必要になってきますし、感情面で社会的生活が難しいことが出てくれば、薬によって「興奮しやすさ」や「怒りやすさ」を抑えるといった対処も必要になってきます。

さらに自閉症には、様々な症状が存在することが知られており、その症状も個人のパーソナリティによって変化が生じるために、「これをしたから自閉症!」と判断しにくいことがあるのも事実です。

ただ、そのベースには、いくつかの特徴的な症状のあるため、それらを以てして「自閉的傾向がある」と判断することは可能です。その「傾向」を確実に「自閉症である」と判断するには、しばらく経過観察をしたり、成長過程の様子を見守ることが大切になってきます。

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自閉症の人に見られる症状の傾向

  • 周囲に人との交流が困難である…これは、よく言われる症状として「目を合わせない」というものがあります。乳幼児ではあやしても全くと言っていいほど笑わないとか、こちらが頑張って目を合わせようとしても、目が合わないなどという傾向があるのです。他には、親や身内・兄弟姉妹など、自分にとって身近にある存在と、全くの他人との重要度の差がわからず、人見知りをしないという傾向もあります。
  • (まだ幼児の場合)言語発達に過度の遅れを生じる…言葉を発し始めるのが遅い傾向はかなり強く、発したとしても、誰かとコミュニケーションを取るためのものではなく、意味不明な言葉・単語である場合が多くあります。ただ、言葉については、正常であってもかなり個人差のでてくることであるので、言葉を発し始めるのが遅いということだけでの判断はできません。
  • 著しい「こだわり」をもつ…この傾向は成長しても持ち続けることが多い「傾向」です。例えば、靴下は右足から履かないとパニックに陥る、とか1日のスタートにすることが少し変えられたりするとパニックになる、というのは良く見られる「順序のこだわり」です。他にも、熱中し始めたことがあると、ご飯もお風呂も何もかも見えなくなって、とにかく自分が満足するまで集中して作業をする、などもよくある傾向と言えるでしょう。

上記の3つに関しては、自閉的傾向の強い人に多かれ少なかれ見える症状です。これらのことを経過的に観察して、個人の性格ではなく、やはり自閉症として「病気」が作用して起こっていることがはっきりすれば、その人は「自閉症」とカテゴライズされます。

また、自閉症には、上記の症状の傾向以外にも、自閉症の重症度を定める指標に「知的レベル」があります。自閉症の人の7~8割は、知的レベルにおいて低下がみられる「IQ70」以下と言われています。

しかし、このIQの計測方法も、自閉症の人に合っていないだけで、自閉症と診断された人の中にも、実は知的レベルはあまり問題がなく、一部の能力だけが著しく不得手であるだけ、という人も多くいます。

例えば、計算・言語能力はとても不得手であるが、音楽・芸術・記憶力に関しては天才的なレベルの保持者、ということは稀ではありません。特に「サヴァン症候群」と言われる人たちは、記憶や計算に関して驚くべき能力を有していることも多いのです。