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自閉症はその日本語の単語の様子とは異なり、後天的な原因がもとに発症する病なのではなく、先天的な脳機能障碍が原因となる病気です。

ただ、この「自閉症」の原因については、現在も研究者による原因究明が行われている最中であるので、現時点で断定的に「これが原因だ!」と言い切ることは難しいのが現状です。

ここでは、現在までに解明しているまたは、これが原因ではないのかと研究が進んでいる事柄についてご紹介していきたいと思います。

自閉症の原因が判明しても「どうしてそのようになるのか」はまだまだ未解明

冒頭でもお伝えしたように、自閉症の原因というのはまだ研究段階のことも多く、これが原因です、と断言できないことが多いというのが現実です。ただ、これまでの研究によって、原因と思しきことはいくつか明らかになってきています。

先天的な脳の機能障碍

自閉症である人は、数字や図形に関する認知能力や記憶の能力に高い特殊性を持つことがみられる一方で、物事全体の流れを読み取るとか、コミュニケーション相手の気持ちを汲み取ることにが難しいという面を持っています。

これらのことから自閉症の原因としては、脳の機能障碍が注目され研究が続けられてきました。

今までは主にCTスキャンを利用した研究が行われており、この研究の結果から、専門家の間では「運動を調整する小脳の機能障碍」が自閉症に関係しているという共通認識ができています。

現在では、医療機器の技術革新に伴い、fMRI(機能的核磁気共鳴画像という検査を行うことも増えてきました。これは、検査中、脳の「どの部分」が機能しているかを見る装置で、この検査から自閉症児は「人の表情を見たときに働く脳の部位」に機能低下が見られることが明らかになってきています。

ただ、これらの検査からは、自閉症の各種症状について「脳の○○の部分が機能低下しているため」というのは判明してきているのですが、ではなぜその部分が機能低下してしまうのかというところについては、未解明であり、研究中になっています。

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遺伝的要因

自閉症は、血友病や筋ジストロフィーといったような病気と同じように、遺伝性が強いのかどうかははっきりしていません。

ただ、自閉症に複数の遺伝子の微妙な変異が関わっていることは、最近の研究によって明らかになってきたことの一つです。

しかしこれも、自閉症の遺伝子を調べる過程でわかったことではなく、他の病気の原因遺伝子を特定する際に、その病気に自閉症が関わるのではないかとわかってきた、言うなれば「副産物」的に明らかになった事実です。自閉症と関わっているのではないかと言われる病気とは、「結節性硬化症」「脆弱X症候群」そして「神経線維腫症」に「フェニルケトン尿症」です。

さらに、自閉症の人は神経間の伝達物質として重要な「セロトニン」量が通常の人に比べ大きく変化していることがわかっています。

ゆえに、このセロトニンに関わる遺伝子について研究が進めば、自閉症の原因解明に何らかの光明があるかもしれません。

さらに、海外での研究で行われたもので、兄弟・姉妹で2人以上が自閉症を発症した家族のDNAを多数解析したところ、第7番目の染色体の1部や、その他いくつかの染色体のフィールドに、自閉症と関わる遺伝子がある可能性が見えてきました。

遺伝子側からの自閉症の原因究明はもう少し時間はかかりそうですが、わかってしまえば、対処する治療法や薬剤に画期的な変化が起こると言えます。

環境的要因

近年、明らかに自閉症児が増えているということで、注目を浴びているのが、環境ホルモンによる胎児への影響です。

これもアメリカの調査結果によりますが、妊娠中にPCBという環境ホルモンが多い湖でとれた魚をたくさん食べた妊婦と、ほとんど食べていない妊婦の生んだ子どもでは、PCBを多く含む魚を食べた妊婦の子の方が、IQが低いということがわかったそうです。

PCBをはじめとする環境ホルモンというのは、内分泌かく乱物質と呼ばれるものです。

ここで取り上げたPCBについては、ヒトの体内で性ホルモンのような働きをしてしまいます。ヒトの性ホルモンというのは、胎児に対しては男女の分化をつかさどるだけでなく内分泌機能の発達や、中枢神経の発達に特に重要な働きがあるのです。

このことについて、環境ホルモンが何らかの作用をしてしまうことで、脳の機能不全や、内分泌系の不調がおこるのではないかというのが推論です。