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がんの最先端治療などが話題となる中、実はそのことと同じくらい、人々の注目を集めているのが「ターミナルケア」です。
しかし、ターミナルケアと聞くと「終末期医療」と思い込んでおられる方も多いですよね?
今回は、このターミナルケアとがん治療の最前線についてご紹介します。
そもそも「ターミナルケア」って何?
冒頭で、ターミナルケア=終末期医療とされている…と書きましたが、実は広辞苑にも、ターミナルケアとは次のように定義されています。
「ターミナルケア…回復の見込みのない疾患末期に、苦痛を軽減し、精神的な平安を与えるべく、施される医療・介護」
しかし、最近のターミナルケアとは、「緩和ケア」と言う大きな枠組みとして、近年でも研究が盛んになっており、そこに関わる医師や看護師、スタッフも様々な面でケアが洗練されてきました。
確かに、ターミナル期とは、余命約半年以内とされる患者さんに対して、「ほぼすべての手段を尽くしてなお、治療に至らず、患者の全人的な状況を鑑みても、これからの治療行為が不適切と思われる次期」とされてはいるのです。
ただ、今では、ターミナルケアは「緩和ケア」と言う形で、がんの治療において、初期段階から「痛みや苦痛を緩和する事」また「治療と人格、生活の質(QOL)を保持すること」を目的に行われることもあるのです。
この場合は、患者はターミナル期ではないので、ターミナルケアと言うより、緩和ケアと言う方がぴったりきます。
がんの治療初期に「緩和ケア」を受けることのメリット
これまでにご紹介したように、ターミナルケアではなく、緩和ケアとしてのケアは、がんの治療初期段階からも、受けることが可能であり、また受けた方が良いのではないか、と思われるケア方法です。
なぜ緩和ケアをがんの治療初期から受けた方がいいのかと言うと、がんの治療にはほとんどの場合において、下記のような「ことがら」が現れるからです。
- 治療中に経験する苦痛(吐き気・嘔吐・痛み・倦怠感など)を伴う症状
- 患者本人と家族にかかるがん治療の不安や心配事
- がんだと診断されたことによる、社会的な状況の変化(仕事を休む・辞めるなど)に直面する
こうしたことを、緩和ケアを受けることで、がん治療の専門スタッフと一緒に考えることができます。
実はターミナルケアと緩和ケアでは、根っこの「患者のQOL」を上げるという部分は同じでも、その上部にあたる「幹」や「枝葉」については少し異なってくるのです。
ターミナルケアが、本来の意味ではやはり、死に向かう人に対しての「尊厳維持」を目的にしている面が強い一方で、緩和ケアは「がんによる苦痛や不安を患者本人と家族を含め、一緒に考え、不安を取り除いていこう」という面が強いということです。
要するに、緩和ケアには「この先のがん治療と、がんが治った際に進む道について、みんなで考えよう」という面が強いということなのですね。
生きるために、QOLを下げることなく、治療をしながらこの先を考えるのが緩和ケアなのです。
治療のしんどさで希望が見えにくくなる時、緩和ケアを受けているかどうかというのは、心の支えが大きく違ってくるものと思えます。
ちなみに、がんの治療初期段階から受ける緩和ケアでは、以下のような事柄を医師や看護師、専門スタッフと考えることができます。
- 自分の病気を正確に知ることで、治療法に関して自分の意思を反映した選択をしやすくなる
- がんの痛みなど、つらい症状を取り除くケアについて相談できる
- 日常生活の質を落とさないように、自分の日常を維持することを相談できる
これには、日常の食事や、自分の意思にそった排泄のケア、また睡眠のケアや衛生、環境のケアがあります。
- 心のケア・家族へのケア・自宅で行う緩和ケアに関する相談
こうしたことを自覚し、相談し、実行できれば、がん治療がたとえ長期になっても、自分の尊厳を保ちながら治療を受けることが可能になるのです。
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