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一般的に自閉症は男性の方が発症数の多い病気であることがわかっています。

自閉症患者が増加している現代においても、やはりその割合をひも解いてみると、男性の方が患者数は多くなっています。

では、自閉症と「性別」には一体どのような関わりがあると言えるのでしょうか。

自閉症に男女差があるのは「脳」に男女差があるから?

人間のもつ器官のなかで、その重要性や「酸素の使用量」について高い地位についている「脳」。

この脳と言う器官について男女差があることは昔からよく言われていることであり、科学的な事実です。

例えば男性の脳が平均して1400~1500gであるのに対して、女性の脳は1250~1350gと言われています。

これは絶対的な体格の差により仕方ない容量の差です。

しかし一方で左右の大脳半球を繋ぐ「脳梁膨大部」については女性の方が大きいことがわかっており、このことによって、女性は言語機能に関して両側の脳をバランスよく活動させることができ、男性より言語分野において高い能力を示すということと関係があるのでは?と言われています。

ただし、頭頂葉での「空間認識能力」に関しては男性の方が皮質の表面積が大きいため、男性の方が「地図などを読むことに長けている」ということと関係しているのではないかというのが一般的な見解です。

この脳と機能に関する男女差に関しては今も研究中のことであるので、これからの研究結果で、以上の仮定が正しいのか、他の要因があるのかが明確になってくると思います。

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自閉症は「男性型脳」が影響している?

イギリスの自閉症研究者であるバロン・コーエン氏は、「自閉症は極度な男性型脳」によるものだという仮説を提唱している一人です。

彼がこの仮説を述べている論文では、男女の「システム化指数(SQ)」と「共感指数(EQ)」について、通常の発達をした男女と、自閉症の男女を対象とした調査をし、仮説をたてています。

通常の発達をした男女への調査でわかったのは、相対的に見ると、女性はSQよりEQが高い傾向があり、逆に男性はEQよりSQが高い傾向にあるということでした。

そして同じ調査を発達障碍やアスペルガー症候群の人たちに対して行ったところ、それらの病を有する女性に関しては通常の男性よりも高いSQ指数を示す人が多いことがわかったのです。

またこうした病をもつ女性は逆にEQに関しては低い数値である傾向ということです。

つまりこうした結果から、自閉症と言うのは「男性的な脳」の機能を有しているもしくは、そうした使い方をしているということが言えるのではないかと仮説を立てたということです。

ただし、先述したように、脳の機能と男女差については今も研究中のものであるために、SQとEQの調査だけでは、自閉症に男性がなぜ多いのかを結論づけるにはやや弱いかもしれません。

男女の「染色体」で考える

現在、自閉症の発症について関係している可能性があるのでは?という遺伝子については「100以上」の数が報告されています。

これらの遺伝子は、X染色体、Y染色体を含む全ての染色体の上に存在していることはわかっています。

こうして全染色体が自閉症を関わっていることが、自閉症スペクトラムを生むのではと考えられています。

ただ、この遺伝子のなかにおいて、X染色体の上にある遺伝子がより「直接的」に自閉症の発症に関わっていることがわかれば、性染色体においてX染色体を1つしかもたない男性において、女性よりも自閉症が発言する確率が高くなる、という「男性に自閉症が多い」理由の1つを説明できるかもしれません。