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現在の日本では、幼少期に自閉症などの発達障碍が判明したり、その疑いがみられた場合などに「療育」というステージに進むことを進められます。

これは「治療教育」の略語なのですが、この療育を受けることによって、子ども本人はもちろん、その子を支える家族にとっても「正しい方向への導き」ができてくるのでとても重要な取り組みです。

ちなみに大人になってから「自分は発達障碍かも?」とわかった人にも、適切なプログラムを用意している自治体もあるので、まずは各関係機関に相談をしてみましょう。

療育って何をするの?

乳幼児には、各自治体が「乳幼児健診」を行っていると思います。6か月や10か月、1歳や2歳と、その健診時期は各自治体で少しずつ異なりますが、必ずあります。

この乳幼児健診では身体の発育だけでなく、心の発達についてもチェックをしていることが多く、特に2歳を過ぎてからの健診では、そうした「発達相談」も兼ねている自治体は多くあります。

言葉や運動機能を一概に「○歳だからここまでできてないと変!」とはできません。しかし、明らかに言葉が出てない、少なすぎる場合や、不器用さが極端に見える場合、強すぎるこだわりなどが見える時には、専門機関への相談を促される時もあります。

ただ、ここで「ちょっと専門の人に話を聞いてみたらどうかな?」と言われるのは、むしろ本人にはとても有効な事です。親としてもびっくりする気持ちもあるかもしれません。でも発達障碍でもそうでなくても、本人がこれから生きていく社会で「生きやすく」なるための導きがあるのが療育なので、心配なことがあれば、一度相談するのは大変有意義なことなわけです。

では療育機関ではどんな「治療教育」がなされているのか、一般的なものを少しご紹介します。

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言葉の使い方を学び、課題を明確にする

まず療育機関では、自閉症をはじめとする発達障碍の治療(教育)についての正しい説明があります。これが基礎にないと、療育が進んでいきません。

発達障碍児への療育は、家族と専門機関、そして本人の3人4脚と言ってもいいでしょう。自閉症児では、言葉からの情報の読み取りよりも、イラストや写真などを使う方が意図を汲み取ってもらいやすいのが特徴です。

そうした自閉症児の特徴を踏まえたコミュニケーションを中心にして、療育は進みます。

こちらからの意図を伝えやすくなれば、今まで言葉だけで伝わりにくかったことも、スムーズに伝えられるようになり、コミュニケーションの幅が広がります。

また、できない事ばかりに目を向けられがちな自閉症児ですが、療育では彼らのペースや個性に合わせて課題を用意してくれるので、達成感を味わう機会が増え、自己肯定感を養うことができます。

社会のなかで生きていくことを学ぶ

自閉症をはじめとする発達障碍をもつ子どもにとって、社会の規範を「自然と」身に着けるのは困難なことです。つい興味のある方へ飛び出してしまい、信号を無視してしまったり、順番を守りにくかったり…親としては「またか…」と疲れていた事柄についても、療育でしっかりとトレーニングをすることで、彼ら自身が正しくルールを守れるようになります。

一度理解できれば、彼らのルール意識はとても高いので、赤信号をむやみにわたることはなくなりますし(むしろ普通の人が「今は車が来てないから渡っちゃえ」とするところでもきっちり守れる人になります)、順番もきちんと守れるようになるでしょう。社会的行動の規範を療育と家庭で教わり、トレーニングできることで、彼らが「社会」から孤立してしまうことを防げます。

家族が正しい「対応法」を学べる

自閉症やその他発達障碍を抱える子には、その症状や病気に「合った」、「適切」な対応法があります。先で挙げたように言葉だけではコミュニケーションしにくい彼らには「絵」や「写真」がとても有効な意思伝達手段になります。

そうしたことを知っている場合と、知らない場合では、家族の対応も変わってきます。言葉で伝わらずイライラしていたことも、イラストを利用すればスムーズに伝わることがあるのです。

双方の気持ちをおおらかに日常を過ごすためにも、自閉症などに対する正しい知識を得ることは重要です。

9歳の壁について

自閉症やその他の発達障碍を抱える子にとってよく越えなければならない時期ということで「9歳の壁」といわれるものがあります。

これは、ちょうど9歳(小学校3~4年)の時期に、勉強が難しくなってきたり、人間関係が複雑になってきたりすることに、自閉症児(などの発達障碍児)が対応できず、症状が深刻化することがあるということです。

9歳の時期の勉強というのは、算数で言えばこれまでの足し算・引き算・掛け算という比較的簡単で、ルールさえ理解すれば解けた問題から、割り算や分数、四則計算や図形など簡単なルールだけでは対処できない問題がでてくるようになります。

その問題の深化が、彼らの前に立ちはだかるわけです。人間関係で言えば、ただみんなとワイワイ遊んでいた低学年の時期から、ギャングエイジと呼ばれる時期へと入り、女の子ではグループ化が著しくなったり、友人間での「秘密の共有」が始まったりします。
そうした人と人との「深くなる」関係に、またもやついていけなくなった自閉症児は、学校生活で困難さを感じるようになってしまうのです。
しかし、これらのことについて、上記で述べてきたような「療育」に通っていたり、家族に適切な知識があったり、または相談できる存在があることを知っていれば、みんなで彼らの成長を支えることができるわけです。
自閉症やその他の発達障碍を持つ子のなかには、その特性を生かして研究者になる人も少なくありません。

協力者をたくさん味方につけて、自閉症児の心身の発達を存分に伸ばせられることがとても良いことではないでしょうか。