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がんはその患者数が多いこともあり、医学界の中では最もよく研究されている分野ともいえます。
ですので、まさにがん治療は日進月歩で色々なことが明らかになっているのですが、このほど、「細胞タイプ」でがん治療が前進する可能性が出てきた、という研究結果が発表されました。
これは一体どういうことなのでしょうか?
がん症例の診断を向上できる技術
がんというのは一般的に「乳がん」「膀胱がん」「肝臓がん」「肺がん」など、そのがんが発生した臓器によって分類されますよね。
私たちが現在理解しているのはまさにこうした分類でのがんなわけです。
しかし、今回研究結果が発表されたのは、がんの発生臓器から分類をすすめるという今までの方法ではなく、臓器を構成している「細胞」に着目をしてがんを分類する、という方法なのです。
先に例に挙げた「乳がん」や「膀胱がん」も、確かにがんが発生した臓器は異なるのですが、もとを質せばどんな臓器も「細胞」から成っている点では変わりがありませんよね。
こうした点に注目をして、今回ご紹介する研究では、12種類のがんについて、なんと3500を超える腫瘍サンプルを分析したということです。
この分析の結果、がんを発生臓器ではなく、がん化した細胞や分子の特徴に基づき腫瘍を定義しました。このことで、がんの症例における約10%で、その診断を向上させることができる可能性があるという結論に至りました。
研究結果が生かされそうながんとは?
ここで紹介した研究結果が顕著に見られたのは、膀胱がん及び乳がんということです。
細胞による分類をすると、膀胱がんには少なくとも3種類の亜型があることが確認され、1つは肺腺がんと呼ばれる非小細胞がんの形状とほとんど同じ、さらにもう1つは後頚部や肺の扁平上皮がんに最も近いということがわかったのだそうです。
こうしたことがわかったことで、膀胱がんの患者に対する全身治療において、奏功性に大きな違いが見られるのはなぜだったのかという理由を説明できるようになるのだといいます。
つまり、例えば私たちが今まで「乳がん」などと一括りにしていたがんに、本当はいくつかの種類があって、その種類のせいで、同じ薬を使っているのに「効く人」と「効かない人」がいた、なんてことがわかるようになる可能性がでてきたということなのですね。
この研究がもっと一般の治療に活かされるようになれば、膀胱がんα型とか、膀胱がんβ型とかいう分類ができるようになって、そのがんにより適した治療ができるようになるというわけです。
この内容は、これまでずっと望まれてきた「がんの個別治療化」にまた一歩前進したと言える研究結果として、期待を集めています。
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