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ハリウッドで活躍するアメリカ人女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、乳がんの予防のために「両乳房の切除」を行った手術については、日本でも大きく報道されたのでご存知の方も多いと思います。

乳がんは早期発見によって一昔前より生存率がかなりあがっているがんであるとはいえ、やはり罹患してしまうのは怖いですよね。

乳房を切除するという、女性にとってはちょっとショッキングで勇気の必要な内容ですが、この方法はどのくらい乳がんリスクを減らすことができるのでしょうか?そもそも効果はあるのでしょうか?

乳がんリスクを高める「遺伝子変異」とは?

このサイトの別ページでも詳細をご紹介していますが、そもそもがんとは「細胞」の「突然変異」によって、がん化した細胞が異常に増えていってしまうという現象です。

日本人に関しては、誰しも何らかのがんにかかるような状態であるわけですが、やはりそこには「○○という部位の細胞ががん化しやすい」という遺伝情報も関係しています。

冒頭で述べたアンジェリーナ・ジョリーさんは、彼女の血縁者(母親)が乳がんで亡くなっていたりするという「乳がんにななりやすい素因」をもったいたというわけです。

つまり、家系として乳がんの人がいない人より、彼女の方が乳がんについてはなりやすい体質だったということですね。

そうした「元々の」事情もあって、彼女は自分が受けた検査で「乳がんのリスクを高める遺伝子変異」が見つかった際に「乳房切除」という選択をしたのです。

乳房切除は、乳がんを取り除く時に施術することも多いので、もとから乳房がなければ乳がんになる確率は格段に下がるというわけです。

ちなみにアンジェリーナさんが受けた検査では、BRCA1という遺伝子に変異が見つかったということです。

ただ一般論として、女性全体に関してで見ると、このBRCA1やBRCA2のどちらか一方もしくは両方が変異している場合において乳がんを発症している人は、乳がん患者全体の10%に過ぎないということです。

この遺伝子が関係しているがんである卵巣がんにおいては、この2つの遺伝子の変異によって卵巣がんを引き起こした人は、卵巣がん患者全体の15%ということです。

しかし、BRCAに変異のある女性が一生のうちに乳がんを発症してしまう確率は約60%と高く、変異のない女性の乳がん発症率12%に比較すると5倍も高いことになります。

アンジェリーナさんはこうした「発症リスク」の数字を鑑みて、両乳房の切除手術に踏み切ったということです。

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予防的「切除」のリスクや利点

アンジェリーナさんのように、家系として乳がん発症リスクが高いと思われ、さらに遺伝子検査においても将来のがん発症リスクが高いとされる人が切除手術をすると、明確に発症の確率は下がります。

アンジェリーナさんの場合だと、本人談で発症リスクは5%以下になったと言われています。

これは切除手術を受けるうえで大きな利点と言えます。

また、現在では乳房の再建手術の技術が相当に上がっているので、がんの発症リスクになる箇所を取り除けば、あとは残して(たとえば乳首や乳輪など)再建手術によって乳房は残せることもあるわけです。

アンジェリーさんも予防的切除をしていますが、乳房の再建手術は受けているということです。

リスクとしては、やはり大きな外科的処置であるので、麻酔や入院、傷などによって身体には大きな負担をあけることになるのは否めないという点があります。

場合によっては、手術の傷から他の炎症などを起こしたり、手術の傷が自分のコンプレックスになることがないとは言えません。

乳がんという大きな負担を背負わないために行うのが予防的切除手術なわけですが、それでも、安易に考えてとる方法ではないことを念頭におくべきだとは思います。