この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

これまでに、再婚をするにあたって養育費がどのように扱われてくるのかをご紹介してきました。

ここで、これから離婚を考えていたり、再婚を視野に入れ始めた方に、今一度養育費についての基本へ立ち返ることをおすすめします。

なぜかと言うと、それは、「養育費に関するトラブル」を未然に防ぐためなのです。

離婚と養育費の基本

離婚の際に問題になるのは「親権」と「監護親(平たく言えば養育者)」です。既に離婚を経験された方はご存知かと思いますが、「親権者」と「監護親」は同じでなくてもよいものです。

親と言うのは、離婚して子どもと離れたからと言って、親でなくなるわけでは当然ありません。

離婚をする際には、子どもを実際に育てていく親(監護親)は、子どもと離れることになる親(非監護親)に「子どもを育てていくにあたり必要な費用」を請求することができるのです。

これが世に言う養育費であり、離婚をして子どもと離れる親は、当然支払うべき費用と言うことになります。

養育費と言うのはこのように「子ども自身の成長」に必要な費用なので、子どもが小さいうちは監護親が養育費の采配をするのが普通ですが、気持ち的には「子どもの代理で養育費を管理している」と思っておくことが肝心です。

マスコミ等で1部の芸能人などが、元夫や妻からの「子どもへの」養育費について間違ったことを発信していることがあります。

それは例えば「支払われている養育費によって、『自分の』生活が成り立っている」というような発言ですね。

そもそも養育費は子どもに対して費やされるものなので、元妻や夫を養う目的のものではないことを、支払う側も、支払われる側も、重々頭に叩き込んでおくことが肝要です。

しかしながら、養育費と言うのは、子どもの生活を最低限維持する程度支払われれば良いという費用でもないという事実があります。

これは、「生活保持義務」と言われるもので、子どもには、「非監護親(離れて暮らしている親)」と同程度の水準の生活を、子どもにも保証するようにする、ということです。

ですので、子どもへの養育費は、子どもが通う学校や子どもにかかるであろう食費などだけを負担すれば良いのではなく、生活全般で不利にならないようにする必要があるのです。
では、非監護親の生活が苦しくなった場合、子どもへの養育費は減額できるのかというと、そうではありません。

養育費は「そもそも働けない・収入がない・扶養すべき」子どもに対する費用ですので、親はどんな状況でも養育費を支払う義務があるのです。

そう、養育費は「余裕がある時だけ払えば良い」などというものではないということです。

SPONSORED LINK

離婚に至るまでに養育費を取り決めていなかった場合

離婚に至る経緯と言うのは、各夫婦間で本当に様々だと思います。

夫婦間の話し合いや状況によっては、離婚の話し合いがうまくいかないままに、戸籍上は離婚が成立したということも少なからずあります。

では、離婚に至るまでに、しっかりと養育費の取り決めをしていなかった場合は、もう非監護親に対して養育費の請求はできないのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。養育費は離婚時に取り決めができていなくても、離婚後に相手方に支払請求をすることが可能です。

万が一、離婚時に「養育費は要りません!」と言ってしまったとしても、基本的に養育費の請求権は子どもの権利なので、子ども自身が請求者として支払いを請求することができるのです。

基本的には、養育費の算定方法は以下のように出すことができます。

支払う側ともらう側の基礎収入を認定し、支払う側ともらう側(もちろん子を含む)のそれぞれの最低生活費を算定する。さらに支払う側ともらう側の負担能力の有無を確認する。(ここで、支払う側の収入が、支払う側自身の最低生活費を下回っている場合は、養育費の負担能力はなしとされます。)次に子どもに充当されるべき生活費を認定し、支払う側の負担分を認定して金額確定となります。

以上の流れを算定表なしではじき出そうとすると、膨大な書類と資料が必要になるため、養育費の算定は大変な時間がかかることになります。

ゆえに養育費を速やかに出すことを目的として、算定表を利用することがすすめられるわけです。

ここまで、養育費の基本的事項について、今一度おさらいをしてきました。次に、養育費算定表から出した「金額」について、どのように考えるべきかをご紹介します。

養育費と算定表の金額

実は養育費算定表で算出される金額と言うのは、子どもが通う学校などについては基本的に「公立」を軸に考えられます。

しかし、子どもが通う学校は公立であることばかりではありませんよね。都心部に行けば行くほど、贅沢ではなく、子どもが私立に通っていることも多くなります。

このような場合では、養育費算定表で算出した金額より、子どもにかかる費用が多くなるために、養育費の増額をしてほしいということになるのが一般的です。

しかし、基本的に効力としては、算定表の効力が強いために、何も説得や話し合いをしなければ、養育費は増額することはできません。もし、子どもが私立学校へ通うことで、養育費を増額してほしいという要求が話し合いだけではまとまらなければ、裁判にて調停を行う必要がでてきます。

そうすると、調停では支払い義務のある親が、子どもの私立学校への進学を容認しているとか、支払義務のある親の収入や資産、学歴などから鑑みて、支払い義務のある親に、学費を負担させることが妥当であるという事情を説明したうえで、養育費の加算がどうしても必要であるということを訴えていく必要があります。

養育費を支払う期間は?

養育費と言うのは、原則として、支払いを請求した時点以降から支払ってもらえることが一般的なルールです。ですので、請求時点起算はできますが、過去に遡って請求することはできません。

つまり、離婚時には、実際すぐに養育費を支払ってもらえなかったとしても、一先ず請求だけはしておいた方が良いのです。

協議だけは忘れずにしておくことが肝心なのですね。

また、養育費は子どものための費用であるので、原則は子どもが成人するまで(つまり20歳まで)は支払い義務があります。

ただし、両親ともに子どもの大学進学を望んでいる場合は、大学卒業まで養育費を支払ってほしいということを、離婚協議や調停で明確に主張して、取り決めておく必要があるのです。

養育費の増減にかかる諸々

養育費は大体において月々の分割払いであることが多いのですが、少数として一括払いを希望する人もあります。

しかし、一括払いの場合、利息分が差し引かれたり、余分な税金が発生することもあるので、相手の支払いに信頼がおける場合は、分割の方が何かとお得といえるかもしれません。

さらに、子どもが大病を患ったりして、一時的に大金が必要となった場合は、必要ヶ月分だけ、養育費を追加することは可能です。

これは大学進学の際の入学金などの一時的なものにも言えることです。